修学旅行の朝
外の風景が青い色に染まっていた
密度の薄い2泊3日
バスの中では図書の先生お薦めの本を読んでいたこと
ぼんやりとして窓の外ばかり見ていたらマイクを渡されて
歌わされそうになったこと

適当に、前を歩く人についていったら
知らない学校のバスに乗り込んでしまったこと
すぐに降りたけど 
恥ずかしくて 
でもおかしくって誰かに言いたくなったこと 
 でも言葉は体と表面に張り付いた汗の膜の間を反芻するのみで
空気を振動させることは無かった
あまりにも静かで
バスの中は暴力的なまでに喧騒に溢れていたけど

 同室の人が遅くまで、誰が好きだとか、あの体はエロいとか、将来のこととかについて話し込んでいて
ふすま一枚で仕切られたベッド・ルームにいる僕は
彼らには構わず、寝てしまおうと思ったけど 
なかなか寝付けなくて
布団を頭からかぶって

 朝ホテルで食べたバイキングは
思ったとおりまずかった
薄いオレンジジュースを
何杯も飲んで誤魔化していたら
バスの中でトイレに行きたくなって困った

 目的地に向かっている車中で
思ったことをメモした
どうせ暇だったし
 
  「世界に存在する様々なものはとどまる事は無く
   身勝手に流れていって
   手で掴むことさえ出来ない
   ましてや僕の手では」

  「目のなかには出来る限り取り込んでみたけど
   きっと記憶には残らないんだろうな
   こんなに綺麗な夕焼けも」

 家に一番近い駅で何人かと降ろされた
誰とのさよならもなく
彼らはあっという間に黒に溶けていった
 少し肌寒い夜だ
遠くに月が出ていた
自転車で家路を急ぐ

 お土産は買わなかった
何を買っていけばいいのか分かんなかったし
カメラを持っていけばよかったな
と後で思ったけど
どうせ荷物になったろうし
撮るものだってなかっただろう

 明後日からは
 またいつも通りの生活
 

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索